相続対策の立案

相続対策のタイミング

相続対策は、相続が発生してからではほとんど何もできません。相続対策は生前から計画的に進める必要があります。
では、生前とはいつからか?日本人の平均余命は男女ともに80歳を超えておりますが、死の間際では採用できる相続対策は限定的となってしまいます。相続対策は早いに越したことはありません。50歳から考え始めても早すぎることはありません。

相続対策の目的

当事務所が目指す相続対策の目的は、「円満な相続による次世代への資産承継」です。相続対策と言えば、世間では節税対策をイメージされる方も多いですが、当事務所では円満相続のために、以下の3点をバランスよく考慮して対策を立案いたします。

  • 遺産分割対策
  • 相続税対策
  • 納税資金対策

遺産分割対策

相続税は少ないに越したことはありませんが、遺産分割対策よりも節税対策を優先すると歪んだ相続となる傾向があり、結果として円満相続が実現できず、相続争いに発展しかねません。
遺産分割対策は、当事務所が最も力を入れている分野でもあります。具体的には以下の3点を重要視しております。

  • 財産目録の作成と相続税の試算
    現在自分が保有している財産及び債務を一覧化します。加えて相続税額の試算をし、現時点でのご自身の資産状況と将来の相続税額を把握していただきます。

  • 遺言書の作成
    遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言等その他にも様々な種類が存在しますが、主なものとしてこの2つを推奨しております。それぞれメリット、デメリットがあるため、ご自身とご家庭に適したものを選択する必要があります。


  遺言書の種類と比較


自筆証書遺言公正証書遺言
作成方法遺言者が、日付、氏名、財産の分割内容等の全文を自書し、押印して完成。
(注)2019年からは財産目録についてはワープロ書きが認められた。
遺言者が原則として、証人2人以上とともに公証役場に出かけ、公証人に遺言内容を口述し、公証人が筆記して完成。
メリット
  • 遺言者が単独で作成できる。
  • 費用がかからない。
  • 遺言の形式不備等により無効になるおそれがない。
    原本は公証役場にて保管されるため、紛失、偽造のおそれがない。
  • 家庭裁判所による検認手続が不要。
デメリット
  • 文意不明、形式不備等により無効となるおそれがある。
  • 遺言の紛失、偽造のおそれがある。
  • 家庭裁判所の検認手続が必要。
(注)2020年7月から始まった自筆証書遺言保管制度では、公証役場にて自筆証書遺言が保管されるため、家庭裁判所の検認が不要となる。
  • 作成までに手間がかかる。
  • 費用がかかる。
(注)目安として1億円の遺産を3人で均等分配する場合は、約10万円

  • 民事信託の活用
    生前における相続対策で近年注目されている民事信託の活用をお勧めしております。民事信託にはこれまで不可能であった相続対策が実現できる機能が備えられており、今や相続対策の検討には欠かせない存在となりつつあります。詳しくは「民事信託」のページにてご紹介いたします。

相続税対策

相続税は少ないに越したことはありません。しかし闇雲に節税対策を推進すると相続争いに発展しかねないことは先にも述べました。当事務所では、採りうる最良の税対策のみを厳選し、ご提案しております。以下具体例を記します。

  • 相続税評価額の圧縮
    預貯金や有価証券などの相続税評価額が高い資産を、不動産(賃貸アパートなど)やその他の資産へ組み換えることにより、相続税評価額を圧縮します。さらに土地は利用区分によって評価額が大きく増減しますので、うまく活用することにより相続税評価額をさらに低減させることができます。


  土地は利用区分によって評価額が変わる

 例)借地権割合:  70%
   借家権割合:  30%
   賃貸割合 :100%

図:更地100% 貸家建付地 (アパート用地等)1-(借地権割合×借 家権割合×賃貸割 合)=79%  貸宅地 1-借地権割合=30% 小規模宅地等 小規模宅地等 評価を適用した 場合の土地

更地は最も相続税評価額が高く、賃貸物件を建築したり、土地を他人に貸し付けると評価額が低くなる。
さらに賃貸物件の購入に際し、借入れをすることにより、相続財産評価額から借入金残高を控除できる。

(注)小規模宅地等の特例
被相続人が自宅や事業用として使用していた宅地を相続により取得し、従来と同様の用途に引き続き利用することとした場合、一定の面積までは最大80%相続税評価額を減額するという制度


  土地の有効活用例

図:①建築費 8,000万円 ②敷地 5,000万円

(前提)
時価5,000万円の更地(または青空駐車場)を保有。ここで8,000万円の借入れをし、アパートを建築。

条件)借地権割合:70%
   借家権割合:30%
   賃貸割合 :100%

①アパート8,000万円×約70%(注1)=5,600万円
  5,600万円×(1-30%)=3,920万円

  (注1)固定資産税評価割合は、時価の概ね7割と言われている。

②敷地5,000万円×約80%(注2)=4,000万円
   4,000万円×(1-(70%×30%×100%))=3,160万円
  (注2)路線価評価割合は、時価の概ね8割と言われている。

③合計相続税評価額
  ①+②=7,080万円

④借入金控除
  ③-8,000万円=0円以下

相続税評価額は実質0円となる。年数の経過とともに建物の価値は下がり始めるが、借入金は通常元利均等返済であるため、元本の減少は建物の価値減少より遅くなり、財産の実質価値が小さい状態が長期に渡り続く。しかも賃貸物件を保有することで収益力が備わり、納税資金対策にもなる。
※ただし、相続開始前3年以内は無効。

  • 小口化不動産を活用した相続税評価額の圧縮
    不動産は相続税評価額を圧縮する効果があることから、相続対策の一環として不動産への資産組み換え事例は数多くあります。
    しかし、現物の不動産へ投資するとなると数千万円以上の投資となり、不動産投資経験のない方や不動産知識の乏しい方には高いハードルを感じることとなります。
    そこで近年注目されているのが、「小口化不動産」です。
    東京や大阪の一等地に建設された数10億円、数100億円の賃貸ビルやホテルなどの特定の不動産の権利を一口500万円もしくは1000万円と小口化したもので、その不動産から得られる賃貸収入等を口数に応じて分配される不動産投資の手法です。
    株式や投資信託のように購入できる手軽さがある上に、相続税評価額は不動産税制が適用されるため、現物不動産と同様に相続税評価額の圧縮効果が見込めます(※ただし任意組合型に限る。)

図:小口化不動産による相続税評価額圧縮効果イメージ

  小口化不動産のメリットとデメリット

メリットデメリット
相続評価額の圧縮ができる物件が限られている。商品化する事業者が少ない。
小口化されているため、遺産分割の際に分割しやすい持分の売却が簡単にはできない。不動産事業者ではなく、販売事業者に売却依頼する
小口化されているため、生前贈与しやすい使用することはできないため、所有している実感がわかない
管理の手間がかからない
東京や大阪などの一等地に不動産投資ができる

小口化不動産には、さらに民事信託と併用することにより相続対策としてのメリットは大いにありますが、デメリットとなる部分もあることから、購入にはやはり検討を要します。

  • 生前贈与による相続対策
    相続財産の一部を生前に贈与することによって、死後の相続財産を減らしていきます。ただし一度に多額の財産を贈与すると、贈与税が高額となるため、贈与税の特例制度をうまく活用し、数年に渡り計画的に財産分与を図ります。

図:基礎控除110万円を活用した財産の移転  例)毎年110万円以下ずつ、子供名義の口座へ振り込む。 基礎控除額以下であるため、贈与税は無税。
図:相続時精算課税制度の活用  60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子や孫に対し、財産を贈与した場合、贈与財産の価額から特別控除2500万円を控除し、2500万円を超えた部分に対し、一律20%の贈与税が課税される。 その後、贈与者が死亡した場合は、生前贈与財産は相続財産に加算して相続税を計算する。相続税の計算において、すでに支払った贈与税額がある場合は相続税額から控除できる。 アパートなどの収益物件を早期に相続人に贈与することにより、被相続人が収入すべき賃貸料が相続人が収入することとなり、相続人の財産の増加が図られる。不動産オーナーにとっては、有効な生前贈与対策といえる。 ただし相続時精算課税制度は、一度選択すると、通常の暦年課税贈与に変更することはできないため、適用に際しては十分な検討が必要。

納税資金対策

納税資金対策においては、生命保険を活用した対策がオーソドックスな手法です。被相続人を被保険者及び保険契約者、相続人を保険金受取人とすることにより、相続発生時にまとまった資金を用意することができます。さらに相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を利用することができるので、納税額の圧縮にもつながります。
法人を経営している場合は、法人名義で生命保険を契約し、被相続人を被保険者とすることで死亡退職金として、相続人にまとまった資金を用意することができます。死亡退職金についても相続税の非課税枠の利用が可能となります。


  生命保険を活用した納税資金対策(例:法定相続人が2名の場合)

図:預貯金 3000万円 → 預貯金の一部を生命保険とする 預貯金 2000万円(課税対象 )、生命保険 1000万円(非課税対象 500万円×2名(法定相続人の数) )

預貯金の一部を、被相続人を被保険者、相続人を受取人とする生命保険契約を締結することにより、相続税の生命保険金の非課税制度を利用して、相続人に対する納税資金を確保します。
生命保険金は「みなし相続財産」と言われ、遺産分割協議の対象外となることから、指定した相続人に確実に相続させることができる点も利点です。この他にも生命保険を活用した相続対策は数多くあります。ご家族の状況に合った対策を検討する必要があります。