相続税の申告代理

相続税は平成27年の改正を経て、亡くなった方100人のうち約8人に課税されると言われております。当時は「大増税時代到来」と叫ばれておりましたが、未だ身近にあるとは言えない税目であります。しかも多くの方は、人生で相続を経験することが一度か二度程度であるため、世間の認知度は決して高くはありません。
当事務所では、相続税の申告代理において、以下の3点を心がけております。

  1. ご家族の円満相続を重視し、かつ、二次相続を見据えた遺産分割案のご提案
  2. 相続後の資産運用を見据えた遺産分割案のご提案
  3. 納税資金確保を見据えた遺産分割案のご提案
相続税は、納税額を低く抑えようとすればするほど、歪んだ相続となる傾向にあります。
従って、納税額の適正ラインを見定め、かつ、ご家族が円満に相続手続きを済ませられるようお手伝いすることが我々の使命でもあります。そのためには上記の3点を見据えた遺産分割案のご提案が当事務所の重要業務と位置付けております。

相続税の早見表

  相続人に配偶者がいる場合

表:相続税の早見表 相続人に配偶者がいる場合

  相続人に配偶者がいない場合

表:相続税の早見表 相続人に配偶者がいる場合

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※被相続人の遺産を法定相続人が法定相続分どおりに相続するものとして税額を計算しております。(配偶者ありの場合は、「配偶者の税額軽減の特例」を活用しております。)

相続税は累進税率を採用しているため、相続財産が多額になればなるほど、税率が高率となってまいります。

相続税の仕組み

図:相続税の仕組み ①遺産総額 ②債務葬式費用 ③基礎控除 ④課税遺産総額 ⑤法定相続分で分割 ⑥税額を一旦合計 ⑦各人の財産取得分に応じて税額も分配
図:相続税の仕組み ⑥税額を一旦合計 ⑦各人の財産取得分に応じて税額も分配

  ①遺産総額

被相続人(お亡くなりになった方)の亡くなった時点で保有するすべての財産の総額となります。

  ②相続開始前3年以内の贈与財産

相続開始前3年以内の贈与財産とは、相続開始の日から3年前以内に被相続人から贈与を受けた財産は、被相続人の相続財産に足し戻さなければならないという制度です。
過去3年以内の贈与履歴から贈与を受けた財産の価額をプラスします。

ただし令和6年1月から施行された税制改正により、「相続開始前3年以内」から「相続開始前7年以内」へ変更となりました。以下の表のように段階的に3年から7年へと加算対象期間が変更となります。

贈与者の相続開始日加算対象期間
2024年1月1日~2026年12月31日相続開始前3年間
2027年1月1日~2030年12月31日令和6年1月1日~相続開始日
2031年1月1日~相続開始前7年間

相続開始日によって加算対象となる期間が異なりますので、上記の表を参照に生前贈与の加算対象期間にご留意ください。

  ③相続時精算課税適用財産

相続時精算課税適用財産とは、相続時精算課税制度の適用を受けたことにより、被相続人から過去に贈与を受けた財産のことです。相続時精算課税適用財産も被相続人の相続財産に足し戻さなければなりません。詳しくは相続時精算課税制度をご参照ください。

  ④非課税財産

非課税財産の主なものは以下のとおりです。以下の財産は相続税法上の非課税財産となっているため、これを遺産総額から控除します。

相続税の非課税財産

  • 墓所、仏壇、祭具など
  • 国や地方公共団体、特定の公益法人等に寄付した財産
    (相続税の申告に際し、一定の手続き等が必要)
  • 生命保険金(死亡保険金)のうち次の額まで
    500万円 × 法定相続人の数(ただし受け取った生命保険金の額を限度とする)
  • 死亡退職金のうち次の額まで
    500万円 × 法定相続人の数(ただし受け取った死亡退職金の額を限度とする)

  ⑤債務葬式費用

相続開始時点で被相続人が有していた借入残金や未払医療費等の債務の他、被相続人の葬儀等にかかった費用を控除することができます。しかし、葬儀費用等については控除の対象となるものの判定に注意が必要です。以下に主なものを列挙いたします。

葬式費用となるもの

  • 葬式や葬送に際し、またはこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
    仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。)
  • 遺体や遺骨の回送にかかった費用
  • 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(お通夜などにかかった費用)
  • 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
  • 死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用

葬式費用に含まれないもの

  • 香典返しのためにかかった費用
  • 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
  • 初七日や法事などのためにかかった費用

  ⑥基礎控除

基礎控除とは、相続税の申告が必要となるかどうかを判定する一種のボーダーラインです。基礎控除は以下の算式で求められます。

基礎控除=3000 万円+ 600 万円 × 法定相続人の数

  ⑦課税遺産総額

上記の図①遺産総額に②相続開始前3年以内の贈与財産と③相続時精算課税適用財産を加算した額から④非課税財産と⑤債務葬式費用を控除した額が、⑥基礎控除を超えていれば、その超えた額を課税価格といい、相続税算出のベースとなります。

 ①遺産総額
+②相続開始前3~7年以内の贈与財産
+③相続時精算課税適用財産
ー④非課税財産
ー⑤債務葬式費用
ー⑥基礎控除
―――――――――――――――――
 ⑦課税価格 課税価格は相続税算出のベースとなる金額。逆にこの金額がマイナスであれば、相続税の申告は必要ありません。

  ⑧法定相続分で分割し、算出税額(仮税額)を算出

相続税額の算出に先立ち、⑦課税価格を法定相続分で一旦仮で分割します。
仮分割後の各法定相続人に割り当てられた⑦課税価格をその金額に応じた以下の速算表掲げる税率を乗じて各法定相続人の算出税額を算出します。ここで算出した算出税額はあくまでも“仮”の金額です。算出された各法定相続人の算出税額を合計し、相続人全員分の相続税の総額を求めます。

相続税の速算表

法定相続分に桜する取得金額税率控除額
1,000万円以下
10%-
3,000万円以下
15%50万円
5,000万円以下
20%200万円
1億円以下
30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超
55%7,200万円

  ⑨各人の財産取得分に応じて税額も分配し、分配後の税額からそれぞれ各人に対応する税額控除等を控除

最後に各相続人に割り当てられた税額から、各相続人に適用可能な税額控除を控除します。各種税額控除は以下の表のとおりです。ただし相続税の2割加算対象者については、税額控除ではなく、税額に加算することとなります。

相続税の税額控除

  • 暦年課税分の贈与税額控除
  • 配偶者の税額軽減
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除
  • 外国税額控除
  • 相続時精算課税分の贈与税額控除

相続税の2割加算の対象となる人

財産を取得した人が、被相続人の一親等血族(代襲相続人となった孫を含む。)および配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額は2割増しとなります。被相続人の養子は1親等の法定血族であることから、2割加算の対象とはなりませんが、被相続人の子が相続開始前に死亡しており、その孫が代襲相続人となっている場合を除き、相続税の2割加算の対象となります。

相続税の2割加算の対象となる人

相続税申告の流れ

図:相続税申告の流れ 相続開始(本人死亡) 通夜・葬儀 相続人の確定 相続放棄又は限定承認 所得税・準確定申告 遺産調査 遺産の時価評価 遺産分割協議 遺産分割協議書の作成 遺産の名義変更 遺留分減殺請求 税務調査

※相続手続きと相続税申告の一般的な流れであり、ケースによっては前後する場合もあります。ただし、相続放棄及び限定承認は相続開始後3カ月以内、所得税準確定申告は相続開始後4カ月以内、相続税申告は相続開始後10カ月以内と定めれております。

書面添付制度(税理士法第33条の2の書面添付制度)による保証

書面添付制度とは、税理士によって作成された相続税の申告書が、適正かつ適法な手続きに従って作成されたものであるという税理士による保証書のようなものです。

相続税の申告は、他の税目(法人税や所得税)に比較して、税務署による税務調査につながるケースが多々あります。

そこでこの書面添付制度を利用して相続税の申告書を提出することによって、税務署側では添付された書面の内容を確認し、税務調査へ進むべきか否かを判断します。

書面には、税理士が「相続税の申告書を作成するにあたって、どのような資料を確認しどのような手法で税額計算されたか」といった内容が記されます。

税務署側では、この書面に記された内容が税務調査に値しないと判断すれば、「税務調査省略」と判定することとなります。

つまり書面添付制度は、「この申告書は適正かつ適法ですよ」といった税理士による保証書のような役割を果たします。

当事務所では、相続税の申告をご依頼いただいた場合は、この書面添付制度を原則として利用することとしております。

もちろん、保証書である以上、適当に記すわけにはいきません。

ご依頼人たる皆様から、私共が要求する資料等の適時のご提供なくしては、当該制度を利用することはできません。

まさにご依頼人様と税理士との二人三脚による保証制度となることをご承知おきください。